裁量労働制と障害者雇用
最近、裁量労働制の対象拡大に関する法案が全面削除される、とホットな話題が飛び交っています。
参考:
この裁量労働制、ざっくり言えば、「労働の質さえ保証してくれれば8時間働いたってこととみなすよ」という制度です。いろんな労働制度※がありますが、これは成果報酬型の仕事をしている人々向けの制度だと思います。大学の研究職とか。
これを、課題解決型の仕事(「取引先のニーズを聴取し、当該ニーズに応じた新商品の企画立案・開発を行った上で、当該商品を販売する業務」)などにも適用しようというのが「裁量労働制の拡大」の意図するところだったようです。
※いろんな労働制度の例(ざっくり説明)
フレックス制度=「同じ8時間だったら出勤8時退勤5時でもいいし9時6時でもいいよ」
みなし残業=「残業したってことにして、残業時間に関わらず残業代を一律に払うよ」
本記事は、この裁量労働制と、障害者雇用普及の可能性についてちょっとだけ考察したものです。
障害者雇用は普及していない?
僕は、福祉従事者の観点から、裁量労働制の拡大に賛成です。
そもそも、政策の骨幹である「働き方改革」において、障害者雇用はあまり取り上げられません。なぜでしょう?生産性と関連しないと見られがちだからでしょうか。そんなことないのに・・・
ただ、前記事でお伝えしたように、精神障害者の雇用義務化だったり、法定雇用率の引き上げなど、障害者雇用を取り巻く環境は改善されているように「見えます」。
参考:
普及しているところはしています。でも、していないところはとことんしていません。
なぜか?上記の障害者雇用関連の法改正は、「雇用する側」にとって魅力的な法改正とは言えないからです。「障害者の状況を良くするために、企業は採用努力をしなさい」というものだからです。企業側が「そんなこと言っても、有能な人材が欲しいんだよ〜」「精神障害なんて良くわからないよ〜」「仕事休まれると困るよ〜」と思うのは当然なわけで、雇った後のフォローのことを考えると、依然厳しいです。
それを解決するために、国は「ジョブコーチっていう制度作ったよ〜」「企業内に障害者専門のサポーター配置すると良いことあるよ〜」と、色々考えますが、企業側は「雇う金ないわっ」となります。
そう、障害者雇用(とりわけ知的・精神・発達障害)は、「企業内サポーターありき」なんです。だから、サポーターがいるところでは普及していますし、いないところではとことんしていないんです。
裁量労働制と精神障害者雇用の親和性
裁量労働制は、8時間働かなくても、8時間分の労働の質さえ保証してくれれば、8時間働いたとみなすよ〜、という制度です。そのために、会社への出勤、退勤も、ケースによっては必要ありません。
これが、精神障害者の雇用において大変有効な点なのです。
前記事で、精神障害者の職場定着率の悪さを指摘しました。
また、退職理由として、「職場の人間関係」が大きな位置を占めているというアンケート結果があります。
参考:
会社に行かなくても、働いているとみなされる____
例えば、
Xさんは、A社に雇用されることが決定。裁量労働制による雇用契約を結ぶ。今まで通い続けていたB福祉事業所に出勤し、福祉職員のサポートを受けながらA社の業務を行う。A社は、雇用契約に基づいた給料をXさんに支払うと共に、B福祉事業所にサポート委託費を支払う。B福祉事業所はXさんの特性に応じ、必要な支援を行う。
例えば、
Yさんは、引きこもり経験あり、人と接するのが極端に苦手。C社に雇用されることが決定。裁量労働制による雇用契約を結ぶ。基本的にはSkypeやチャットツールを通じたミーティングなどで報告・連絡・相談を行う。イラスト作成を主な業務として、様々な社内掲示物を作成する。
インターネットの普及により、在宅ワークや、サテライトオフィスも発達してきました。上記の例はあくまで僕の考える「理想」ですが、こういった「働き方改革」もあっていいんじゃないかなあ、と思う次第なわけであります。。